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今夜の番組チェック
夜空の星をじっと見つめていると、まるでそれがものすごいスピードで動いていているように見えてくる、
星を集めた星座は一定の場所で静かに輝いているように見える。N・Yで始めて会った時、
僕にとって銀色さんは、激動のスピードとものしずかな輝きを持った人だと思った。
そんな不思議な人にまためぐり合えた僕は、
眩しさに目を奪われ混乱しながら安らぎの星座達に包まれているような幸せな気分になれるかもしれない。
尾崎豊
約5、6年前に一度、ニューヨークで尾崎君に会って、
東京に帰ったら一度だけまた会おうねと私たちは言ったのですが、
それっきりになってしまい、つい10日ほど前に偶然再会して、このような運びとなりました。
これがその「一度」だとしたら、五年ぶりに約束が守られた2人です。
銀色夏生
ワガママは僕達
尾崎 銀色さんの日常生活あたりから聞いてみな・・・・・・。
銀色 インタビュアーみたいですね。それって。じゃあ、お互いね。
尾崎 そうですね。唐突なんですけど、日常的にわりとボワーンとしてるという感じしません?
しゃべり方とか表情がすごくボワーンとしているような気がするんだけど、
そういう人って外国に行ったりして、寂しい所に行くとふと恋に落ちてしまうような、
そんな気がするというのが僕の中に物語としてあって・・・・・・。どうでしょう、そこらへんは。
銀色 外国に行って、ふと恋に落ちるかということ?そういうことはないけど、別に
尾崎 いつか誰かと同伴で行くんですか?
銀色 仕事で行くときはいっぱいで行くし、一人で行ったことはない。一人で行ったいりするの?
尾崎 一人で行ったりすることのほうが僕は多いかな。それは友達じゃなくて、仕事仲間とか?
銀色 うん。
尾崎 じゃ、恋に落ちようにも落ちる時間がないか(笑)。
銀色 ふだん、どういうことを考えているんですか?
尾崎 ふだんですか。そうですね・・・・・・僕は昔っから言うこと変わらないんだけど、
自分が思い描く夢と現実とのギャップみたいなものにすごく興味があって、
そこから発生していくさまざまな自分というものが育っていく中で枝葉があって、その枝葉が触れる何かというのかな、
そういうものについていつも考えているような気がする。
銀色 今、そのギャップが大きい?
尾崎 ある種、何にも見えない時期というのがあったけど、結局、たどり着くところというのは、
人間が汗水流して働くこととか、生きれることに一生懸命になる事が素晴らしいことだというようなことに気がついてからね、
退廃的なものよりももっと健康的なものに目を向けていった方がいいんじゃないか、
それが人間なんじゃないかなって思っているんですね。
銀色 夢とのギャップが大きいの?今は。大きくなったということ?
尾崎 ある種、大きくなくなっている部分もあるんだろうけれども、社会との折り合いをつけるとか、
そういった意味では夢と現実のギャップというのが逆転して、逆説的な意味でなくなっていくんだけども、
でもそれはいつまでも追い続けても決してたどり着けない、そんなもののような気がしてるんです。
銀色 夢は何なの?
尾崎 小学校の頃に考えたんだけど、一度でいいから、全人類が、ある一瞬、一秒間でもいい、
みんながホントに幸せだって思えるその瞬間が現れることを期待していて、ずっとそんなことを考えているんだけど、
そういったことを考えている人って、タイプとしてわりといないでしょう、そうでもないかな。
銀色 そうだね。自分の外側にいる感じだもんね。
尾崎 自分自身がどうのこうのというよりも、自分自身がどうのこうのになるためには
周りも全部幸せじゃなくちゃいけないとか考えていくと、人間どんどん背負っていくものばっか大きくなってくる。
それはある種、負担と考えたら負担なんだけども、でも人間って一人で生きていけないし、
自分の願いとか信念とかが、自分とつながっている、自分の枝葉の中でも通じ合っている人たちには栄養分だったりとか、
そういった関係でいながら、分かち合っていきたい、そういう気がしますね。
銀色 みんなが同時に幸せだと思いたいということ?
尾崎 そんなふうに感じるね?
銀色 それって一緒じゃないとダメなの?
尾崎 順番だと、結局、格差があったりする。今、この一瞬という中でみんなが感じられる幸せというもの。
銀色さんの本の中にも、その一節を読んだ瞬間に、もしかしてそれと似たような感覚を得るんじゃないかなという気がするんだけどね。
銀色 今の間にいっぱいいろんなことを考えついたんだけどさ、最初考えてたこと忘れたなあ(笑)。
尾崎 最初に考えてたって、例えば男と女とか、そういうことじゃなくて?
銀色 そうじゃなくて、一瞬のことを考えての仕事だから。
尾崎 一瞬の状態があればいいとか。
銀色 そうそう。でもそれはさ、ほんとの夢でしょう。自分でもわかってる夢なわけでしょう。
でも、そういうふうに向かっていってるわけだよね。
例えば、言ってみるとそういう形になるんだけど、でももっと現実的にそれに近いことに対して向かって行ってる?
尾崎 向かっていってるんじゃないのかなあ・・・・・・。
銀色 自分と自分以外の人ってどういうふうに関係づけられているの?
尾崎 先生にお説教されてる見たいなきがするんですよ(笑)。
銀色 生徒の悩み相談、みたいな気になってきちゃった。
尾崎 カウンセリングされてるみたいな気がして(笑)。
銀色 違うの。どんな心の形をしてるのか、知りたいと思って、一個ずつききたいなと思って。一個ずつというか、輪郭をつかみたいと。
尾崎 ある意味で、触発してもいいという関係の中で自分自身をさらけ出すとするならば、自分が・・・・・・。
銀色 自分と他人、自分以外のものってさ・・・・。
尾崎 自分以外の人っていうのは、ほんとにいろんな価値観を持っている人がいると思うな。十人十色だと思う。
四人ぐらいまでになっていくと、似通ったのが出てくるかもしれないけど、そういった意味で、みんな少し違う所があって、
そしてみんな違う環境で生きてるなあってつくづく思う部分があって、でもなおかつ何かで結ばれているというと、
それは言葉だったりとか、表情だったりとかするんだろうなと思う。ある種の美意識というか価値観とかね。
価値観とか美意識に関しては、ものすごく違いがあるんだけども、違いがあるように見えて、
どこかで必ずどんな人間も細い糸で結ばれている部分があるような気がして・・・・・・。
銀色 自分で何かを表現しているでしょう。そういう仕事をしてるでしょう。その表現で何かを伝えたいと思っているの?
尾崎 銀色さんはどうですか?
銀色 私はね、あるのよ、伝えたいことが。何かっていうとね・・・・・・。そうそう、あるの、すごく。
確固たるものが、ある一つの気持ちで・・・・・・。そうなの、さっきどんな人も細い糸で結ばれていると思うといったでしょ。
きっとそれと近いと思うんだけどさ。感覚というか、感情だけは共通だと思う、ある種の。
尾崎 銀色さんの本を読んで、すごく感じたんだけれども、ほんとに心の聖域の部分ですよね、銀色さんの書いている部分って。
じゃれたり、抱き合ったり、慰めあったり、傷ついたり、色々とあるんだけど、ものすごく純粋で、
聖なるものという感じがするんですよね。聖書っていうか、バイブルみたいな感覚があるんですね。
それは言ってもいいものなのか悪いものなのか、僕がそう思ったんだからしょうがないかな、みたいなところがあるけど。
銀色 私がいちばん言いたいことは、絶対言葉には書いていない。いいたいことは絶対書かない。
尾崎 そうなのかなあ、あの文章・・・・・。
銀色 書いてるものももちろんなるよ。でも、もっといちばん言いたいことってあるじゃん。もっと中心ことっていうか。
それは書かずに・・・・・・。書くと、気づけないでしょう、読んだ人が。自分が気づくべきじゃない?何か大事なことは。
私が気づいて欲しいと思うことを気づいてほしいから、そのためにたくさんの言葉を書いているけれども、
そのいちばん気づいて欲しいことだけは書いていないと思う。
尾崎 僕なんか逆に、いちばんわかってほしいものだけをかいつまんで書いていこうとすると、どんどん現実離れしていっちゃう。
方程式みたいになっていっちゃう。だから人がこうすると傷つくよとか、ブッたら痛いから泣くよとか、
そういうふうに方程式みたいになっていって、でもどうして泣くの?とか、どんどん追求していくと、
すごく細かい微分されたものになっていって、それってほとんど、そこまで達すると、会話にならないものになったりするという。
そういうものに巻き込まれたというか、陥った時期が一時期あって。昔からそうなのかもしれないけどね。
音楽なんかあまり聴かないんですか?
銀色 聴かない。本も読まない。でも、本は時どき読む。でも、読まないね。雑誌は読まないし。
尾崎 サーカスでいちばん好きな見せ物というと何だと思います
銀色 私、サーカス見たことないもん。
尾崎 もし見るとしたら。ライオンが火をくぐる所がいいとか・・・・・・。
銀色 どういうのがあるの?
尾崎 あと空中ブランコとか綱渡りとか、ピエロがでてきたりとか。とりあえず全部見たいとか。
銀色 別に見たくない(笑)好きなの?サーカスが。
尾崎 そういう意味じゃなくて、文章を読んでいて、好きだというものの形態が、
僕もすごくそういういったものに興味持つんだけど、ある種、入りにくい部分ってあるでしょう、そういう好きなのって。
銀色 どういうこと?
尾崎 銀色さんが好きなのって、他の人が入りにくい部分で、知ってる人だけが共感しちゃう部分ってない?
銀色 あるかもしれない。意外とポピュラーじゃないかもしれない。
尾崎 意外とポピュラーじゃないんですよ。
銀色 ほんとはそうじゃないんだけどね。見てるとこが決まってるからじゃない、私が。
見てるとこが決まってると、範囲が狭まってるのよ、興味の対象の。
尾崎君って本名だよね?
尾崎 そうなんです。
銀色 じゃあ、人生ってどんな感じ?本名で生きてて、みんなが知ってると。
尾崎 缶は投げられるわ、石は投げられるわね(笑)。中学生にはからまれるわ、道を歩いて酔っぱれってりゃカラオケ歌わされるわね(笑)。
銀色 でも、どっちかっていうと顔はそんなに覚えられてないでしょう。
尾崎 うん・・・・・・。
銀色 まだいいほうなんじゃない。
尾崎 そうなんだな。テレビにあんまり出てない分、おとなしくしてればいいんだけど、友達とかでパーッと飲みにいっちゃうでしょう。
そうすると、なんだか知らないけど分かっちゃうんだよね。
それと、自分が本名でやってるからとかっていう意識とは関係ないんだけど、どうしても自分の次の世代に目を向けてしまったりとか、
自分より一つ上だったり二つ上だったりしてもいいんだけど、周りの人たちを見てしまうというか、齢も名前も全然関係ないんだけども、
いつもそういう目で見ちゃってるところはあるかもしれない。群衆の中に溶け込めないというのかな。
銀色 でも、溶け込めないのは、みんな溶け込んでないんじゃないの?
尾崎 誰しもが?
銀色 うん。
尾崎 そうなのかなあ。まあ、そうだったら納得はいくんだけどね。けっこうギスギスしたところって感じません?
世の中、例えばこういうふうな銀色さんとの関係のなかではこれが仕事の素晴らしさだなって思っちゃうけど、
全然見知らぬ他人と出会ったりする瞬間って、その人たちが言ってる、日頃、
もしかしたら自分でも口にするようなことかもしれないような憂さ晴らしの言葉がひどく自分に痛切に感じられて、
何でこんなに人間悩んでしまうんだろうなと思い返すことが多いっていうか。そういうのって、銀色さんもありません?
銀色 どういうこと?簡単に言ってくれない?
尾崎 簡単に言うと、他人がしゃべってることを聞いて、私は違うと思うんだね、っていうような・・・・・・。
銀色 それはあるよ。
尾崎 私は違うと思うのにね、と感じても、それで詩を書いちゃったりすると、
結構その人たちのことを分かってあげようとかっていう意識から盛り上げていかない?
銀色 エエッ、分からない・・・・・・。
尾崎 例えばさ、僕がすごく大好きな曲の中で意図を言うとすれば、「オネスティ」というビリー・ジョエルの歌があるんだけど、
If you serch for tenderness
It isn't hard to find
君が優しさを見つけようとするならばそれはそんなに難しいことじゃないよ
You can have the love you need to live
そういうのがあって、最後に、
Hoesty is such a lonely word
Everyone is so unture
Honesty is hradly ever heard
日本語で言うと、そういったいろんな人たちを共通項を見つけたよとかって思えるけれども、
誠実さみたいなものを最終的に求めていくと、それはあまりに虚しい。
それから、「ノーワン・エバー・イズ・トゥ・ブレイムドゥ」というのがあるんだけど、
それは誰のせいでもないんだという曲なんだけど、その曲の中でも、例えば状況として、レストランに行くときに、
テーブルもあるしメニューもあるんだけれども、座る椅子がないというようなこととか、
プールはあるんだけれども君は泳ぐことが出来ないとか、そういう状況に対応できない人たちがいっぱいいて、
でも、エブリワンって最後の節のほうで盛り上ってくるところがあるんだけど、しかし私たちみんなはすべての人を求めている、
でもその中で折り合いのつかないものがいっぱいあって、それは、誰のせいでもないんだね、というような意味があって・・・・・・。
なんだっけ、最初に話そうとしたのは(笑)
銀色 正直さは結局虚しいとか言ってなかった?
尾崎 その前に。
銀色 いろんな人がいて、その人が言う何気ない日常生活の愚痴みたいなことを、自分は決して言いたくないと思いながらも、
自分の作品の中でそれをすくい上げるようなことを書いてしまうということ。
尾崎 すくい上げるようなことを書く事が出来なければ、その人たちのことをきちんと理解したうえでなければ、
ある種の本当の真実としての発言にはならないんじゃなかなという気がする。
銀色さんなんか、体験に基づいて、でも本当のことは言ってないと言ったけど、本当のことを・・・・・・。
銀色 本当のことは言ってるんだよ。教えてあげないだけだよ、答えを。
尾崎 それはどうして?
銀色 だって本人が気づくべきじゃない。それがいちばん幸せなんじゃない。幸せっていうと変だな。
それがいちばん楽しいことじゃん。でも、私の詩を読んでる人はみんな気づいたと思うよ、
自分のなかで、いちばん楽しいことを。それが私の詩だと思ってるんだけど。
尾崎 これは決してたどり着けないことだから聞けるのかもしれないけれども、
最後にハルマゲドンが来てもノストラダムスの大予言でも何でもいいんだけど、
地球滅亡の最後の詩を書くとしたらなんて書くかなって、それはいま答えなくても全然いいっていうか、
答えてほしくはないんだけれども、一体何を書くだろうなって考えた時に、僕のなかには、中心になるものに、
みんながほんとに幸せだなってつくづく実感したいというのがある。どこまでいっても幸せだなあ、というような瞬間が欲しいなあと思う。
銀色 フーン。なんでそんなにみんなのことが考えられるの?私なんか考えていないよ。自分が楽しければいいなって。
尾崎 それ、けっこうわがままって言わない?
銀色 言う(笑)。
尾崎 けっこう言われるよ。
銀色 だって、私は楽しく生きていければいいなあと思ってるんだもん。
尾崎 お酒、けっこう飲むんですか。
銀色 なんで急にお酒の話になるの?
尾崎 お酒飲むと、けっこう蝶のように舞ってしまう人かな、とかさ。
銀色 変わんないよ。
尾崎 これでワイン二本目だけど・・・・・・。
銀色 そんなことない。非常に強いの、お酒。だって、私が楽しければいいと思うということはさ、私が思うことは、
すべての人はみんな平等に思うべきだと思ってるから、みんなが楽しければ良いと思ってるということだからさ。
同じなのよ。私が楽しいと思うことと、私以外の人が、その人自身が楽しいと思うことは同じと思ってるから、そう思う。
尾崎 放課後のことを題名にして書いた詩があるでしょう?
銀色 あったかもしれない。
尾崎 いっぱい書いてるから、全部朗読しろと言われても無理だと思うんだけど、
その詩を読んだとき、単純に共鳴したというのがあってね。そういうのって単純に共鳴していいものなのか、
それとも自分自身のなかで、銀色さんというのはこういう人なんだから、
こういうふうに考えてる人なんだなと思って理解すべきなのかというようなことで、ちょっと迷ってしまうようなところがあった。
もしかしたら銀色さんに聞く人というのはそういうところでちょっとは迷うんじゃないかな。
そこらへんに関してはどう思いますか。先生みたいな・・・・・(笑)。
銀色 究明していいかどうか迷うということ?
尾崎 そうそう。
銀色 変なところに視点を当ててるね。でも、そこが尾崎君の存在する場所だね。
尾崎 いいのか悪いのか、定かではないんですが。
銀色 ちゃんと価値があるんじゃない。必要とされてるんだから。
尾崎 そうかなあ。そこで単純に共鳴している自分自身のこらえきれない涙とかね。
そういったものとか、単純に人に見せてもいいものなのかなということ。
銀色 私には分からない意識だね、それって。そこが私と違うとこかもね、もしかして。
尾崎 人前で泣くほう?
銀色 なかないけど、しょうがないときは泣くんじゃないかな。
尾崎 僕なんかけっこうよく泣いちゃうんだけどね。
銀色 どういうときに泣くんですか?
尾崎 豪語してもしょうがないんだけど。テレビ映画とか・・・・・・。
銀色 コンサートとかで泣かない?
尾崎 コンサートではやっぱり、ね。いろんなとこ見ちゃうから。照明やってる人のこと見ちゃったり・・・・・・。
銀色 意外と冷静なの?
尾崎 冷静、冷静。
銀色 入り込んでるように見えるけど。
尾崎 入り込んでいくんだけど、入り込んで、いちばん最後に、終わった時に、今日のPAの人、どうでした、
モニターは分かんないけど、今日の照明の人、どうだった、うたってるやつらはどうだったというような、
自分のなかでトータル的なものを、いつもコンサートではそういう意識で見ているから、違うかもしれないけど。
銀色 映画とか見たりして泣くの?
尾崎 映画とか見たりすると。
銀色 私、泣くよ。映画とかね、一瞬でもすぐ泣いちゃう、テレビとか。パッパッと変えたときの一瞬に、
感動的な場面があったりするじゃない。そうするとグッと泣いちゃう、表情とかで。
尾崎 そうかなあ。銀色さんってすごくクールのような気がする。
銀色 私、クールだよ、けっこう。クールなのが好きなの。クールな人も好きだし。クールって客観的ということでもあるわけじゃない。
客観的なものが好き、どちらかというと。ものすごく客観的というのはもっと好き。
尾崎 ものすごく客観的なの。
銀色 ものすごく客観的って、ものすごく主観的って感じしない?
尾崎 うーん・・・・・・。
銀色 ニューヨークでの話する?
尾崎 いきなり黒人が寄ってきたのは驚いたんだけどなあ。全然ビックリしませんでした?
銀色 私憶えてない、それは。それよりも「2」という数字を書いて、アヒルを書いたことを憶えてる。
あとはタクシーのなかでさ、前のルームミラーだっけ、そこに十字架がかかっているのを見て、
尾崎君が、それを怖いといったじゃん。そんなの憶えてない?
尾崎 十八のときだから。
銀色 十八?ということは六年ぐらい前?ということは、、私がいちばん最初の本を出す直前・・・・・・。
尾崎 いちばん最初の本だったの?
銀色 うん。こういう本を出したいんだよ、という話をしたの。
尾崎 そうそう。
銀色 ・・・・・・あのときから変わった?なにか。
尾崎 多少変わったかもしれないと思うなあ。内面的な思考の中で、どんどん自分が、何が正しくて何が間違いなのか、
ということに疑問を抱いて、今までの価値観ではいけないんじゃないかという、日頃の自分自身を壊していく作業でね。
で、たどり着くと、そこにあったのは何かというと、精神的に浄化されたものだっという気がした。
つまり、銀色さんが思っているような純粋な心というのかな。それって、ある意味で人を思いやるということにもつながると思うんです。
本質的にというか、根本的にというか、表面的じゃない部分でというか。
精神的に非常に綺麗になっていくために闘っていくことが、これからの僕の価値観なんじゃないかなって気がする。
銀色 これからどうなるの?
尾崎 体を鍛えて・・・・・・。うちの親父が空手の先生なんですよね。牛一頭ぐらい殺せるようになってからまた日本に帰ってきて、
ロックシンガーとしてプロレスもやる、みたいな話。
銀色 ほんとに言ってるの?
尾崎 いやいや、冗談です(笑)。ごく平凡でありつつも、常に自分自身を戒めながら、心を浄化していく手段を見つけたいなと思ってる。
銀色さんはこれからどういうふうにしたいと思っていらっしゃいますか。
銀色 今までと変わらないとは思うけど。
尾崎 でも、一作一作がすごくいろんな表現の仕方してる。
僕はひととおりのやり方しかしてないと思うんだけど、銀色さんっていろんな・・・・・・。
銀色 ちょっと多面性があるんだよね。でもさ、それは諸刃の剣でさ、だって、尾崎君の場合、全部じゃない。
自分の体も含めてすべてが作品なわけでしょう。自分が愛されたりするわけじゃん。やっぱり違うんじゃない表現方法が。
私の場合は、言葉っていうか・・・・・・。全部は違うと思うんだけど。
でも、私は同じようにこれからも無限にやっていくんじゃないかなあ。
尾崎 無限に言葉を追い続けるということ?
銀色 追いかけてはいないけど。
尾崎 吐き出していく。
銀色 吐き出すということでもなく・・・・・・。
尾崎 書き続けていくというか、綴っていくというか。人間って、自分自身の肉体に宿ったこの魂が、
この肉体をどうにか維持しようとしているというふうに思いません?そして自分がやってる仕事をふと考えてみると、
銀色さんが「私たちって人のために発表する場にいる人間なのよね」っていうふうに豪語するでしょう(笑)
銀色 豪語しないって。つぶやくって言って(笑)
尾崎 つぶやくと言い換えて、ある種そうじゃないというか、それってすごく照れくさいことだったりすると思うの。
銀色 そういう見方で見ればね。
尾崎 でも、魂が自分自身の肉体を維持していくなかで仕事をしていったりするとかいうことって、ほんとに神のなせる業というか、
ディスティニティーというのかな、そういうものをすごく感じる。自分が何かをしゃべったりとか。
もちろん日常的に何度も同じことを繰り返してしまうことのためらいだとか、
何度も同じことを繰り返してしまうことへの失望だったりとか、そういうものはあるけれども、
でも常にそこに新しいものを求めようとしてその仕事をしているという自分がね・・・・・・。
これはきっと誰でもそうなんだと思うんだけど、魂を維持しようとしていることのあわられなんだろうなという気がするんですね。
銀色 幸せって感じた瞬間ある?今まで。
尾崎 やっぱりそれは何度かはありましたよね。小さな幸せ、大きな幸せ。銀色さんはどんなときに詩を書きますか。
銀色 決まってない、突然。
尾崎 ある時、タクシーの中で考えたりとか。
銀色 思いついたことを書きとめるときもあるし。忘れちゃうことときもある。
尾崎 思い描いては忘れていって・・・・・・。結局、それがちゃんと、
あのとき言いたかったことが後ですごい表現が出てきたときに、やったと思うんだよね。何かそんな感じがする。
詩に関して、例えば、定型詩というんじゃないんだよね。いろんなことが書けるスタンスにいるから、
たぶんあまり題材に煮詰まったりすることってないのかもしれないけど、煮詰まったことってあります?
銀色 ない。
尾崎 ポワンとしてるって言われたことあります?
銀色 ある(笑)。ポワンとしてる?
尾崎 してる。
銀色 つかみどころがない?
尾崎 つかみどころがないっていうか・・・・・・。
銀色 でも、つかみどころがないって言われたことあるでしょう?
尾崎 僕?僕は変わってるとは言われたことあるけど・・・・・・。
銀色 どういうとこが?
尾崎 いや、分からない、それは。「俺、変わってないよ」って言うんだけど、変わってるって言われると、
変わってるかなあと思っちゃう。ポワンとしてると自分で思います?
銀色 うーん・・・・・・、楽天的と思う。
尾崎 楽天的な、ワガママな僕たちを許してね、というやつですか(笑)。
銀色 うん。許すのも自分だなっていう感じがする
尾崎 なるほどね。楽天的という言葉、すごくいいな、久々に聴く新鮮な言葉だなあと思って。
銀色 楽天的じゃないんでしょう?
尾崎 楽天的じゃないもんね。
銀色 そこが違うのかな。
尾崎 ある種、悲観的な部分・・・・・・。
銀色 ある種どころじゃないんじゃないの(笑)
尾崎 でも、その中にかすかな希望というかね、祈りを込めて生きていきたいみたいな。楽天的なのかな・・・・・・。
例えば明日、地球が滅亡しちゃうとかいう危険とか感じない?
寝ていてクルマの振動とか聞こえるよ,爆弾が落ちたんじゃないかなとかって思わない?
銀色 思わない。
尾崎 たまには思ってみたらどうかな?
銀色 珍しく危機感を自分でつくり出してる人だね。
尾崎 そうかな・・・・・・。
銀色 だから価値観があるのかもね。
尾崎 みんな思ってるような気がするんだけどな。
銀色 みんな思ってないと思うよ。
尾崎 ふーん。
(了)
以下、対談後の感想として同じページに書かれている文章です。
彼女は幻の中でいくつもの言葉を温めているようだ。
さりげない女性としての仕種がとても素敵だった。銀色さんを何かにあてはめてしまうなんて無意味なんだろうけれど。
彼女はふわふわと浮かぶ雲のようだ。たとえば子供たちはその雲を見つめてたくさんの想像を繰り返しながら、
生きている意味を感じるかもしれない。銀色夏生さん、いろいろな話をどうもありがとう。またお会いしましょう。 |
| 尾崎 豊 |
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五年前もどことなく浮世ばなれした印象でしたが、今でもやはり、そのところは同じです。
この人の心は、きっとまだまだずっと遠くにあるのだと思う。
たぶんそこまでは、だれにとっても本人にも、終わらない旅かもしれない。 |
| 銀色 夏生 |
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