尾崎 ストリートチルドレンのドキュメント番組を撮りに行くんだって?ストリート・チルドレンってことは、道端の子供って事だよね。
斉藤 貧乏な子供たちの話なの。
尾崎 (笑いながら)それはそうなんだろうけど。場所はどこなの?
斉藤 あんまり良く知らないんです、私。だから詳しく話せないんだけど、その子たちって、巻き上げたり盗んだりって事をやって
生きているわけだから、その子たちが・・・・・・。
尾崎 危ないんじゃない。何でそういうとこに行くことにしたの?
斉藤 危ないのが好きなの(笑)。
尾崎 危ないのが好き!(笑)。
斉藤 安泰はダメなの。
尾崎 安泰なのはダメ!どうして?
斉藤 安泰だと自分がこそげていくから。
尾崎 自分がだらけていくとかそういう意味?
斉藤 こそげるって言葉、ないですか?こそげるっていうのは、私の中ではそげていくこと、失っていくこと
尾崎 つまり自分をギリギリの境遇においとかないと自分をテンション高く持っていけないってことかなー
斉藤 安泰だと、安泰さになれるでしょ?
尾崎 安泰なほうがいいじゃない。
斉藤 もちろんそうだけど・・・・・・。
尾崎 その番組の意図はなんなの、僕にはよくわからないんだけど。
斉藤 ドキュメンタリー番組っていうのは、ある意味ですごく偽善的な固まりに陥りやすいと思うんですけど、
私はドキュメンタリー番組があるから行くんではなくて、なにか、自分で行きたいから行くって感じなんです。
だから、それが番組としてどう構成されるかは、私にはあまり興味がないの。
尾崎 その現場を自分で見ていたいっていう欲求があるから行く、と。で、自分の気持ちの中から沸騰する何かを・・・・・。
斉藤 そういう人達を見て自分を見つめるっていうんではなくて、ただ単にいろんなものを見たいっていう欲求だけなんです。
いろんなとこでいろんな人が、それなりに不幸でもなく普通に生きているっていう事実を見てみたいだけなの。
尾崎 そうは言うけど、自分のなかで葛藤を持ち続けていたい、それを自分の中できちんと整理していくことで
自分自身を高めていきたいってことなんだろうな。その気持ちはよくわかるなー。僕なんか、そういう子供たちに接したら、
なぜ彼らそういう生活するんだろうってどんどんどんどん深みにはまっていって、破滅するような気がするな。
斉藤 尾崎さんは深みにはまっちゃうタイプですよね。私は、はまらないんです。
尾崎 だから深みにはまらないように僕もこれからは気をつけようって思ってるんけど(笑)。でも、レコード聴いたよ。
斉藤 話変わるから、いきなり(笑)。
尾崎 さいきんナニ?アレンジやってるんだって?
斉藤 やってる分けないでしょ!(笑)
尾崎 いないんだ、できるアレンジャーが。今度なにかあったら頼むよー。
斉藤 よくわからない。(もう一度大きな声で)よくわからないわー。
尾崎 イヤイヤイヤ(となだめるように)。僕ね、『MOON』って曲をね・・・・・・。
斉藤 アルバムです!
尾崎 アルバム、アルバムだよね、あれはね。あれを聴いててすごく印象深かったのは、ひとつひとつの曲の中で、
自分がその世界の主人公たりえてるっていうこと。それはどんな歌を歌う人にも必要なんだと思うけど、
それを一番考えたのは「東京チャンチキおけさ」じゃなくて、なんだっけ?
斉藤 もう!(笑いながら手近のマッチを尾崎さんにぶつける仕草をするが気を取り直して)「大正イカレポンチ娘」
尾崎 そう。あの中で半音フラットして歌うところがあるでしょ。あそこら辺なんか表情が良く出てるなーって思って感心しちゃった。
斉藤 そんな表情なんて考えてるようには思えませんでした。
尾崎さんて「オレはノってるぜ!」っていうノリで、ダーッと歌って、それで終わりになるタイプだと思ってたから。
尾崎 なに?僕のこと?僕はそうだけどね。僕は一発録りの尾崎って呼ばれてるからね(笑)
まあ、何て言うのかな。基本的に歌が上手いってことかな(笑)
斉藤 私、この間の「月カド」の尾崎さんの特集見ましたけど、あん時の話しぶりとはずいぶん違うじゃないですか。
村上龍さんと話している時は「人生はこういうもんですよね」とか話しているのに、
どうして私だと「東京チャンチキおけさ」がどうのこうのって話になっちゃうんですか?
尾崎 イヤイヤイヤ。(真面目になって)扉を一つずつ開けていくっていうのは僕が考えていることと似てるところもあったし、
詩の内容や色々な面で、すごくできのいいアルバムだなーと思って
斉藤 ありがとうございます。私ね、歌う側の感情の押し売りは良くないと思ったんですね。
だから、全部嘘ばっかり。実際にはありえないこととか、自分の気持ちからほど遠いこととか、
感じたこともないようなことを詩にしたの。あのアルバムは、本当は全部嘘の物語です。
尾崎 あ、そうなの?でも、嘘には思えないよ。いつも誰か対象の人がいて、その人は誰かわからないけれど、
聴いている人はそれが自分のことのように思えてきちゃうんだよね(笑)
あと印象に残っているのはね、メリーゴーラウンドの曲、あったでしょ。あのサビの部分の詩だけでも聴かせてくれないかな。
斉藤 (思わず口ずさむ)回れメリーゴーラウンド、回れメリーゴーラウンド
尾崎 (冷たく)歌えとは言ってないよ。その歌の中に・・・・・・。
斉藤 ひどすぎる!(とソファに突っ伏す)。
尾崎 世間ってこんなもんだよ、とか言って(笑)。で、そのあとに。
斉藤 (けなげに、それでもなんとなく歌う感じで)あなたが好きです、ホントはそれだけでーす、ちょっとだけ待って?
尾崎 あれはすごくリアルだよね。
斉藤 あのね、あのメリーゴーラウンドの歌だけホントなの
尾崎 (拍子抜けして)だからー(笑)、なんて言うのかなー、やっぱり辞書で調べたわけ?回るメリーゴーラウンドの気持ちを。
斉藤 違いますよ、やめてください。
尾崎 あれだけはホントの歌ってことは、男の人がいて、対象が・・・・・・。
斉藤 「大正イカレポンチ」ですか(笑)。
尾崎 「大正イカレポンチ」みたいな人が、好きなわけ?
斉藤 やめてください(笑)。私のアルバムの話はいいですから、尾崎さんの新しいアルバムのこと教えてくださいよ。