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新たなる誕生の喜び

尾崎 タイトルは『誕生』っていうんです。
斉藤 私、何曲か聴かしてもらったんですけど、始めの頃よりかずっと落ち着いた感じになったみたい。
    ある意味ですごい自信があるようにきこえるというか。精神が安定してる見たいな感じに聴こえます。
    すごくいいことがあったか、あるいは今の生活に満足してるか、そういう安定した感じがしました。
尾崎 全部聴いてもらわないとわからないよねー。
斉藤 でも、始めの頃って崖っぷちを歩いてて、しかも片足おっこってるくらいの怖さがあったような気がするけど。
    やっぱりパパになったからかしら。
尾崎 自分のことはあまりわからないんだけど・・・・・・。
斉藤 全部できたら聴かしてくれるって言ってましたよね。くれるんでしょ?
尾崎 僕、『MOON』をちゃんと買ったもんなー、でも。
斉藤 じゃあ、買い増すよ(と強気で)。
尾崎 東急デパートで買ったんだよ。
斉藤 (小さな声で)すいません。
尾崎 予約して、ポスターもらっちゃって。
斉藤 やめてください、やめてー(と澄んだ声で歌うように叫ぶ)。
尾崎 ついてきたんだよ。
斉藤 嘘で固めた人生のような言動ですね。
尾崎 そうかなー。
斉藤 言ってることとか書いてることは、すごく、一番真ん中を生きているように見えるのに、
    今言っていることとか仕草っていうのは上澄みっぽい感じがして、その落差がおもしろいのかもしれない。
    それともそんなに私に対して真面目に話す気になれないのかしら。いいですけど。
尾崎 僕ねずうっとレコーディングしてて、毎晩朝の三時くらいに帰ってきてたんだよ。
    表通りでタクシー降りて家まで歩きながら夜空を見上げた時にね、
    何で僕、この夜空の中に落ちていかないのかなーってふと思ったんだよね。
    そういうのっておかしいかな?
斉藤 おかしかないですよ(と言いながら声を出さずに笑っている)。
尾崎 無限に近いものがあるじゃない?で、星がすごくきれいに見えるのってすごく怖くない?
斉藤 ハハハハ。
尾崎 なんだよー。まともに話せばこれだしー。
斉藤 おかしい。だっておもしろいんだもん、尾崎豊って人が。いっつも現実じゃないところで生きてるみたいに見えるんですよね。
    だから、星の話とかすると、ホントにそれがよく似合うので可哀想になってしまうの。
尾崎 あー、それはすごくいい視点だね
斉藤 で、それがかえっておかしくなっちゃうの、そういう感じ。ところで、どうしてそんなに目が腫れてるの?
尾崎 悪かったね、寝てないんですよ。
斉藤 どうして寝ないと目が腫れるんだろう。寝ないと目が窪むっていうのはわかるけど、目が腫れるっていうのはあんまり知らないなー。
尾崎 僕、目、腫れるんだよ。
斉藤 へー。
尾崎 実は昨日ね・・・・・・。これすごくつまんない話だから言うのやめようかなーと思ったんだけど、
    そういうふうに言われたらシャクだから言っちゃうけどさー。昨日四時に歌録りが終わったわけよ。で、五時半くらいに家に帰って、
    ま、寝酒でもっていうんでビールを飲みながら昨日録った最後の曲の「誕生」っていうのをウォークマンで聴いてた時に、
    ボロボロボロボロ涙がこぼれてきたんだよね。
    今朝、しょうがないからスポーツクラブに行って汗でもかけば大丈夫だろうって思って寄ってきたんだけど、
    やっぱりちょっと目が腫れちゃってね。
斉藤 どうして涙がこぼれてきたんですか?
尾崎 なんでだろうなー。とりあえず、録り終わった瞬間からね、もう背筋にゾクゾクって来るものがあって、ずっととれなかったのね。
    今回全二十曲あるんだけど、歌録りは昨日が最後だったわけこれまでの作業の間に自分が触れてきたいろんな事が
    すごく大切だったんだってことが、あらためてその歌を聴きながら、情景が流れるっていうよりも、
    そこにあった固まりが自分の体内から放出していくっていうのかな。それとももしくは、悲しみだけが凝縮していくみたいな。
    ある物とない物が入れ替わって新しいもんになろうとしてるっていう瞬間のウワーッとした動きの中に、
    思わず涙がツーッと出てきた
んだけど、やばいなと思ってね。ま、いいか、こんな話。ま、そんなことがあった。

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