日々の感動の中から芸術は生まれてくる
斉藤 何か今、変わろうとしてるんじゃないですか。
尾崎 変わろう?変わろう(意味を確かめるように)。
斉藤 あるいは、変わっていく過渡期にある、というか。
尾崎 それは由貴ちゃんこそそうでしょ。
斉藤 今?
尾崎 常に人は変わっていくけど、毎日毎日変わっていきたい、と思うでしょ。全て興味のあるものに触ってみたい、
とか、『MOON』のように扉を開けてみたり。
斉藤 私は今、どっちかっていうと日常にチャンネルが合ってるっていうか。うまく言えないんですけど、自分がこういうお芝居やりたい、
とかこういうことをやりたいっていうほうに向いている時と、そんなことどうでもよくて、日々毎日生活してね、
ご飯食べたり何かしてることが楽しいときがあるんです。昨日の晩ね、花火をやったんです、もう夏も終わりだっていうんで・・・・・。
尾崎 線香花火?
斉藤 線香花火はなかったんです。そこらへんの平凡なちゃちい花火だったの、ちょっとくやしかったけど。
尾崎 それは、邪道だね。
斉藤 (笑)で、その花火をやったりとか・・・・・・。
尾崎 それ花火って言わないよ、普通。
斉藤 花火なのー(キッパリ)。それでね、昨日家で晩ごはん食べたんです。それでそのおかず・・・・・・。
尾崎 あんまり食べないの、家では?
斉藤 あんまり家でごはんを食べたことはないの。
尾崎 そうなんだ、へー。
斉藤 だから、家でごはん食べて・・・・・・。
尾崎 僕、晩ごはんは夜に食うもんだと思ったけど、それは違う?なんつって(笑)。
斉藤 よくわからないわー。(気を取り直して)そういうごはんを食べたり猫と遊んだりすることに幸せを感じる時期なの。
そうなるとどうでもいいの、芝居とか芸術的なことは。
尾崎 でも、そういったことがさ、楽しく思える時期が血となり肉となる瞬間っていうものを望んではいるんでしょ。
斉藤 そうなのよ、そういう日常が私にとっては血となり肉となりうるわけ。だけど、一生懸命、
芸術とかクリエイティブなお仕事とかしてると、だんだんだんだん自分がね、エキセントリックになりすぎてね、気持ち悪くなるの。
尾崎 そうかー。僕の親戚に加山又造っていう画家がいるんだけど・・・・・・。
斉藤 (驚いて、身をのけ反らせて)親戚、何ですか?
尾崎 そんなに近くはないんだけど、たまに顔を見せに行ったりするんだよね。今、70歳くらいかな。
仕事しようと思っても体力が続かないんだよね。だから点滴で栄養補給しながら筆もって絵を描いてるの。
それぐらい頑張ってる人もいるんだよね。別にがんばることがおかしいことだ、というふうには聞こえなかたけど、
芸術ということに固執してしまう自分がいけないんだって考えるのは、はっきり言って違うと思うね。
やっぱり芸術っていうものを見つめているからこそ、猫がかわいいんだし。いや、猫がかわいいと思う気持ちがあって、
それが芸術になるって言ったほうがいいのかもしれないけど、そういうことだと思うんだよね。
斉藤 私にとってはエキセントリックになってしまう自分の方が、どっちかっていうとベースだから。
だからきっとそういう生活の方が、私にとっては遊びに出かける、みたいな特別なことだったりするんです。
尾崎 遊びに行ったりって、ディスコに行ったりとかしないの?
斉藤 そんなことするわけないでしょ!
尾崎 たまには六本木とか、遊びに行った方がいいよー。
斉藤 そんな自分のしたくないことしたくないわ!
尾崎 どうして?じゃあ、何がしたいんだよ。もう、わかんないよ、ホント。
斉藤 わかんないっていう意味で言ったらよっぽど尾崎さんのほうがわかんないわよ。
私は難解じゃないもの、ね、見城さん(と「月カド」編集長に同意を求めて)。ねえ、どの時代に生まれてきたかった?
尾崎 僕はねー、そうだなー・・・・・・。
斉藤 縄文時代?
尾崎 なんで?やっぱ土器とか作っちゃって?
斉藤 (笑いころげる)
尾崎 そこまで笑わなくてもいいんだけどなー(ちょっと心外そうに)。
斉藤 (笑いをこらえながら)だって、だって、どこにも似合わないんだもん、可哀想なくらい(笑)。
尾崎 じゃあ、自分はどこかに似合うと思ってるわけ?
斉藤 私なんかどこにでも。大正時代でも明治時代でも合いそうな感じしますよね(と、また、見城編集長に同意を求めて)。
尾崎 何言ってんのよ、自画自賛、自画自賛。おかめはおかめ(笑)。
斉藤 (尾崎さんの頬をパチン、としようとして)ちょっと顔、こっちにもってきて。
尾崎 おかめはおかめだよ、田舎じゃよく言われたらしいじゃない。
斉藤 ひどい・・・・・・。も、傷ついちゃった。(はた、と気がついて)あ、「大正イカレポンチ」」の話してんのね(とニッコリ)。
しかし、よくあのアルバムをそんなにきちんと聴いてもらえて、私、うれしいです。
尾崎 レコードはもう、つくらないの?
斉藤 うん、もう『MOON』作ったから飽きちゃった。
尾崎 そんな言い方、ないんじゃないかなー。自分自身って言うか、ひとつひとつの仕事にその・・・・・・。
斉藤 またやりたくなったらやる。
尾崎 融通のきく会社だね。一年に一枚とか、ノルマないの?
斉藤 でも、私すっごく気が変わりやすいんですよ。
尾崎 なあんだ、やっぱりどこの世界に行っても対応できないんじゃない(笑)。
ダメだよ、そんなことじゃ。参ったなー、どうすんの、そういう自分。
斉藤 ね。
尾崎 反省しろとか言われない?お母さんに。
斉藤 「あなたはね、全てが自己満足のために成り立ってるいるわね」ってお母さんにマジな顔で言われた時に、
ホントに私、生きてていいんだろうかって真剣に思ったことがある。
尾崎 人間失格だもんね、どうも話し聞いてると(笑)。
斉藤 もう!(今度は思わず灰皿を投げつけようとして)