固定観念を捨て戦い続ける
尾崎 僕は物質文明のなかで唯一人間に知性を与えてあげられる媒体が芸術という分野だと、考えているんです。
坂本 いや、僕はむしろなくてもいいものかもしれないと思う。だってさ、地球という惑星にとって、人間という生物はなくてもいいものじゃない。
そしたら公害もなかっただろうし、動物も殺してなかっただろうし。だけど何故か生まれてきた。
そんなものかもしれないよね、人間が作るものに関しても。
尾崎 全ての人がひとりひとりの価値観を持って生きているっていう考え方と、
生きているのは自分ひとりで周りの人間は自分の目に映る物体でしかない、という考え方があるとしたらどちらを・・・・・・。
坂本 答えはわからないけどさ、後者は全くの間違いだよね。
自分の目に映っていなくても、あるものはある、いる人はいる。自分が存在してる必要はない。
尾崎 なるほどね。科学的に証明されているかどうかはわからないけど、どんな形にしろ出会った人の個性とか持ってるものが
自分の中に宿るっていう現象があるような気がしていて、僕は今回それを言いたかったんです。
誰かと会った時点で確実に自分は変革されている、と。
それは人間として生きていく上で認識していかなければならない要求なんじゃないかな!と思います。
リスナーに対するこちら側からの期待には、それに似たものがあるんじゃないかな。
坂本 僕は自分を希薄にしたい、と思うのね。それは自分のなかに異物が多くなるということなの。他者が入り込んでくる。
でも、そうやって自分は豊になっていくわけ。例えば音楽を聴くにしても、固定観念持ってるヤツいるじゃない?
自分が持っているイメージに合わないと拒否しちゃうとか。
そういうどうしようもないものをたくさん持ってしまっているというのが僕は嫌なのね。
だから、全く聴いたことがない音楽に対しても反応できる自分でいたいと思っているんだよ。
尾崎 僕も、それに近い自分の居場所を維持していきたいと思ってるんです。既成概念で自分を縛りつけたくないし。
なんだか聞いてばっかりなんですけど、『THE
SHELTERING SKY』のサントラを作ったんですよね?
坂本 今回は目で画像を観るという努力をしながらやりました。
尾崎 やってみようと思った理由はどんなものなんですか?
坂本 単純にベルトルッチ監督を尊敬してるから(あっさりと)。
尾崎 あー、そうなんですかー。
坂本 同じですよ、このギタリストと仕事をしたいっていうのと。もう、SMの関係ですね、ほとんど。
尾崎 SMの関係ですか(笑)。
坂本 僕が仕事をしたいんだから、虐待されても必死で耐えるわけ。
尾崎 音楽を作っていても虐待されることなんてあるんですか?
坂本 虐待に近い状態、ですよ。
尾崎 じゃ、例えば全曲作って聞かしたあとに、ここはちょっと違う、ということになったりするんですか?
坂本 画像に対して作ってるから画が変わったら音楽も当然変わらなきゃいけないのね。
で、僕が音楽を作っている日々刻々と画が変わっているわけ。昨日あったシーンがもうなくなってたり、変更の連続。
尾崎 はあー、なるほど。で、そのサントラはいつ出るんですか?
坂本 一月に。
尾崎 じゃあその後は次のアルバムに。
坂本 そう、まさに始めようとしているところ。
四月か五月に出る予定で、レコーディングも二月の末ぐらいには終われるんじゃないかなと思ってるんだけど
尾崎 じゃあ僕は、マスタリングが終わった頃に、差し入れでも持って行きますよ。
坂本 楽しみにしてるね。
(了)